事務所に圧力をかける韓国のアイドルグループファン

2018年12月16日付ヘラルド経済掲載の韓国のファン文化に関するニュースの翻訳

「コンサートチケット、グッズ不買運動」 アイドルファンの理由ある反抗

2018年12月16日 ヘラルド経済

韓国内のアイドル産業規模の拡大によってアイドルファンの影響力も大きくなった。かつてアイドルファンはアイドルに対する絶対的な支持者の役割を果たしていたが、現在のアイドルファンは消費者としての権利を行使することに積極的で、ファンの意見がアイドルの活動方向を左右するところまで至った。このような変化の中でもファンがアイドルに対する愛情を基盤に動くことに変わりはない。しかし巨大化したファンの力を悪用する事例も少なくない。甲と乙の間に置かれたアイドルファンの現在にスポットを当てた。

「事務所に誠意がない」 コンサートをボイコット

ファンの愛の表現が盲目的支持だった時代は終わった。現在ガールズグループMAMAMOOの所属事務所RBWを相手にボイコットに成功したファンクラブMOOMOOがこれを証明する。

MOOMOOは先月、MAMAMOOの所属事務所RBWを相手にコンサート”2018 4season F/W”延期を要求する声明書を発表した。

  • コンサートタイトルに該当するアルバムを発売しなかった。
  • RBWのコンサート告知に前回のコンサートポスターが再利用され情報が不十分。
  • コンサート準備と多忙なスケジュールを並行するためコンサートの完成度に疑問がある。

RBWは「コンサートに対する誠意の有無をコンサートポスターで判断しないで欲しい。またコンサート会場との契約で日程を延期できない」との立場を表明した。RBWの対応はMOOMOOの心を動かせなかった。「誠意のない対応には同意できない」と再び反発、SNSを利用した”#RBW_コンサート_ボイコット”ハッシュタグ運動を繰り広げた。このため多数のファンがコンサート予約とRBW公式ショッピングモール利用拒否を宣言した。

MAMAMOO

MAMAMOO


最終的に白旗を上げたのはRBWだった。公式サイトでの投票によりコンサート延期を決定したRBWはMOOMOOによりよいコンサートを開催する事を約束した。

MOOMOOのボイコットはふたつの成果を導いた。コンサート準備期間を延長したために完成度の高いコンサートが保証されると同時にMAMAMOOに余裕を持ってコンサートを準備する環境をプレゼントした。MAMAMOOのメンバームンビョルは「ファンがMAMAMOOのことを心配してくれて、ファンの愛を感じることが出来た。今後もファンとコミュニケーションをとり、一生懸命努力します。」と語った。

このように現在のアイドルファンはアイドルを応援する位置に留まらない。消費者として良質なコンテンツを得るための権利を行使することに積極的だ。アイドルの活動方向に疑問を提起し、問題解決のためファン意見をとりまとめる。MOOMOOのボイコットに似た事例が増えている。

日本を重視して韓国を顧みない

今月初め、ソウル三成洞のPLEDISエンターテインメント社屋には大量のポストイットが張られ市民の目を引いた。PLEDIS所属グループNU’EST WのファンクラブL.O.Λ.Eが、今月中旬に日本で予定されたアルバム”WAKE,N”発売記念イベントの中止を求め張ったものだった。日本のファンを対象にしたこのイベントでは、NU’EST Wメンバーのサイン会、写真撮影会などが行われる予定だった。

L.O.Λ.Eは「このイベントでの過度な身体密着やファンの無理な要求によってNU’EST Wの人権が侵害される可能性がある」と主張した。L.O.Λ.Eは数日間にわたりPLEDISに中止を要求、結局PLEDISは「ファンの皆様にご心配をおかけしたことに心からお詫び申し上げます」とイベント中止を決定した。

防弾少年団

CD収録曲を変えたファンもいる。防弾少年団のファンクラブARMYがその主人公。今年9月、防弾少年団の所属事務所BIGHITエンターテインメントは日本の音楽プロデューサー秋元康とのコラボレーションを発表した。この発表は大きな波紋を広げた。日本の人気グループAKB48のプロデューサーとして有名な秋元康は右翼性向と女性嫌悪歌詞で論議を呼んだ人物でもある。ARMYはコラボレーション中止とこれに関する資料の全廃を要求、ボイコットの意思を表明した。BIGHITも結局秋元康が作詞した曲をCDから除外することを決定した。

昨年ガールズグループGFRIENDのファンクラブBADYが公式グッズ不買運動を宣言したことがある。GFRIENDメンバーの全身写真をプリントした大型クッションが”性の商品化”との指摘を受けたためだ。この問題はGFRINEDの所属事務所SOURCE MUSICがグッズ発売を撤回したことで一段落した。

ボーイズグループiKONのファンクラブIKONICは所属事務所YGエンターテインメントに対し「iKONの健康に配慮しない過度なスケジュール、韓国を顧みない過度な日本重視」などを理由にボイコットを宣言した。YGエンターテインメントのヤン・ヒョンソクはSNSで「IKONICの全ての要求に応えるために努力する」と語り、その結果iKONは今年4枚のアルバムを発売することになった。

ファンが権力者になるまで 影響力変遷史

相次ぐファンのボイコット成功例が示唆するものは明確だ。ファンの影響力が所属事務所が無視できない水準に達したことを意味する。かつてアイドルのためにファンが出来ることは限られていた。CD、グッズ等を購入したりコンサートを観覧することが全てだった。所属事務所が提供するコンテンツを一方的に消費するだけの存在に過ぎなかった。そのためファンの数と影響力は別の問題と考えられていた。例えば第1世代アイドルグループH.O.Tは2000年ソウル蚕室メインスタジアムでのコンサートに約5万人を動員する人気を誇っていたが、そのファンはH.O.Tの解散を止められなかった。

2000年代中盤、第2世代アイドルグループが人気だった頃、ファンがアイドルに対する社会的認識を変えるために動き始めた。当時、アイドルを他のジャンルより見下げる傾向が深刻だった。アイドルファンはアイドルに対する肯定的なイメージを植え付けるため寄付やボランティア活動などを繰り広げた。しかしまだ所属事務所との関係においては依然として主導権を握れなかった。

2010年代、第3世代アイドルになるとアイドルグループの増加によって生存競争が激化、所属事務所とファンとの関係が逆転し始めた。毎年数十組がデビューするなか、アイドルと所属事務所はライバルを抑え多数のファンを確保するため宣伝攻勢を繰り広げる必要に迫られた。SNSの発達による双方向コミュニケーションの活性化が大きな役割を果たした。第1,2世代アイドルのファンは所属事務所の一方的な告示によって動いたが、第3世代アイドルのファンはSNSを利用して知りたい事を質問したり対応を求めることが可能になった。

このような時代の変化を活用したのがMnetのアイドルサバイバルオーディション番組”プロデュース”シリーズだった。ファン投票で勝者を決めるというプロデュースシリーズのルールはファンの役割をアイドルの企画及び制作領域まで拡大させた。

プロデュース48

人気アイドルグループを多数抱える芸能事務所の広報担当者は「事務所に意見するファンは以前から存在したが、一部に過ぎなかった。プロデュースシリーズの出現とSNSの発達によってファンの声が大きくなった。特にファンが具体的かつ客観的な根拠を元に活動や改善事項などについて要求する。そこからコンテンツ企画やマーケティングのヒントを得ることが多い。インターネットをモニタリングしてファンの意見を出来るだけ反映することに努めている」と説明した。

しかし副作用もある。この関係者は「所属事務所の公式SNSをはじめ非公開の内線電話にまで公式活動とは関係のない問題で抗議するファンも少なくないため業務に支障が出ている」と自制を求めた。

(翻訳終わり)

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